田口 晃岩波書店
価格:
819円

おすすめ度の平均:


ウィーンものの本(特に手に入れやすいという条件をつけると)と言うのは
ガイドブックを除くと、音楽に焦点を当てたものか(その中で当時の風俗等に
触れることは有る)、ハプスブルク帝国首都としてのそれ(皇帝や皇妃について
述べたものも含む)のどちらかに大別されます。
と言う訳で、この本はそういった本とは別の方面から攻めています。ウィーン
と言う街がどう成立したか、換言するとヨーゼフ1世の城壁取り壊し&再開発で
オペラ座等が建設された・・・の先に踏み込んだ一冊です。
第1期:神聖不可侵の皇帝による統治が革命により(鎮圧されたが)揺らぎ
自由主義、民族自決等の萌芽が出てきた。例えば選挙権の拡充、リンク通り
開発の詳細など・・・
第2期:その後はキリスト教(カトリック)を後ろ盾とする政党が市政を担った。
ここら辺からユダヤ人に対する露骨な差別が目につくようになる。また、この
時期はそれまでの何でも民営化を改め、インフラ系を市が整備する形に改めて
行った(ガス、上下水道に市電)。
第3期:さらに第一次大戦の終結を受けて「オーストリア共和国」になった後は
左派が政権を握り労働者目線での政治を行った。教育制度の拡充、労働者向けの
集合住宅など(例えば観光名所化しているカール・マルクス・ホーフはこの頃
作られた)。
・・・と言うように3月革命(1848年)から、ナチスによる独墺併合(1938年)
までの90年間についてを3期に分け、各期の政権が何を成したか、当時のウィーン
はどんな町だったのか、貴族と新興富裕層と労働者層はそれぞれどう絡んでいた
のか・・・といったことを解き明かしてくれます。
旅をして、音楽に触れて、ウィーンと言う街に興味を持ったそんなあなた
こそ、手にとって一読して欲しい一冊です。